令和6年度山形県公立高校入試問題難易度

◎令和6年度の山形県公立高校の入試問題についての雑感

 今年の入試問題は国語が昨年並みに易しく、数学は昨年よりかなり易しく過去20年で最も易しく、社会と昨年よりも易しく、理科もかなり易しかったと思います。英語だけが難しくなったと思います。全体的に易しかった問題だったと思います。

 

◎国語

 大問1は例年通りの問題で、分かりやすかったと思います。大問2は題材自体はあまり馴染みのないものでしたが、問題の方は例年並みと思います。大問3の古文は昨年同様4問だけの問題で例年並みの問題だと思います。大問4の問1の漢字も例年並み、問2も簡単だったと思います。作文はグラフを見て書く問題でしたので、書きやすかったと思います。昨年の国語は易しい問題でしたので、昨年と比べると今年の問題は若干低い平均点になると思います。

 

◎数学

 今年の数学は過去20年で最も易しかったH31年の入試問題より易しい問題になっています。特に大問2と3が易しく、大問4の証明も比較的証明しやすい問題でした。最後の2問も時間をかけることができた人は解けたはずなので、100点を取れた方が結構いたと思います。

 大問1は3の円が描かれてない円周角の問題が難しい方の問題です。3の円が描かれていない円周角の問題は教科書にある定番の問題ですが、意外とできない問題です。△ABCで考えるとき、円周角が等しい性質を利用して、∠ABD=∠ACD=36°、∠BAC=∠BDC=55°、∠CBD=∠CAD=42°となり、△ABCで分からない角度は∠ACBだけとなります。よって、180°から36°と55°と42°を引いた47°が答えとなります。4の確率の問題は「もどして」の部分を見落とさず、自然数に0が入らないことを覚えていれば、正解のウを選べたと思います。5の正四面体の展開図の問題は組み立てることができるのがアとイで、そのうち、見取り図のような絵柄になるのはアであることが分かれば正解できます。頭の中で組み立てられないと難しい問題ですが、できた人は多いと思います。

 大問2は関数の応用問題ができれば、ほとんど解けたのではないかと思います。1の(1)の問題は一次関数で、xの増加量だけが分かっているときのyの増加量を求める問題です。教科書にもある基本的な問題ですが、意外とできない問題です。変化の割合を求める式から、(yの増加量)=(変化の割合)×(xの増加量)となり、一次関数では変化の割合が傾きと同じなので、(傾き)×(xの増加量)=‐3となります。1の(2)は直線の式にy=0を代入し、点Bのx座標を求めます。次に直線の式に点Aのx座標の4を代入し、点Aのy座標を求め、点Aの座標から反比例の比例定数を求めます。求めた反比例の式に点Bのx座標を代入し、点Cの座標を求めると二次関数の比例定数aを求められます。多少複雑ですが、関数だけで座標が求められるので比較的簡単な方の問題です。2の作図の問題ですが、条件①より、線分ACの垂直二等分線を引き、線分ACの中点を求め、点Bと中点を結びます。条件②より、コンパスの針を点Bにさし、コンパスの幅を線分ABの長さにして円を描きます。点Bと中点を結んだ線と円の交点が求める点Pとなります。H31年の作図の問題をしたことがある人はできたと思います。3の文章題の問題ですが、入試問題ではよく出題される問題でしたので、解けた方が多かったのではないかと思います。昨年度の7月にA山を訪れた人数をx人、B山を訪れた人数をy人として、連立方程式を立てる方が簡単です。昨年度の人数よりx+y=14700、今年度の人数より、1.2x+1.1y=14700+2460(=17160)を作り、解くとx=9900となります。xは昨年度の人数なので、今年度は1.2×9900=11880(人)となります。今年度の人数に計算するのを忘れなければ、文章題は完答できたはずです。4の資料の問題ですが、累積相対度数の意味が分かっていればできたはずです。1の関数の応用問題ができれば大問2は完答できたと思います。

 今年の大問3はまた動点の問題でした。点の動きが比較的に単純だったので、グラフさえかければ、左側は完答できたはずです。2の問題ですが、図1の面積を求め、線分PDの長さをx㎝とし、台形PQCDの面積をxで表し、図1の面積の半分に等しい一次方程式を作って求めます。ただし、求めたxの値は答えではありません。毎秒1㎝で動く点Pが点Dに点Aを出発してから14秒後に着くので14からxの値6を引いた8秒後が正解となります。PQの長さは点PからBCに垂線を引き、交点をHとして△PQHで三平方の定理で求めます。2の問題は例年に比べ解きやすかったので、大問3を完答できた方が結構いたと思います。

 大問4の1の証明問題は昨年同様、円がない合同の証明でした。仮定の∠ACB=∠AECより、底角が等しいので△AECが二等辺三角形になるといえば、AC=EAを導き出せます。また、BC//DAで錯角が等しいので∠AEC=∠EADとなり、∠ACB=∠EADを導けば、仮定のBC=DAを使って2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので△ABC≡△EDAの証明できました。分かりやす証明問題でしたので、完答できた方が多かったと思います。2の(1)は、△ABE∽△GECであることに気づけばできたと思います。EA:CG=BE:ECで、EA=AC=5㎝、EC=BC‐BE=6㎝より求めることができます。CG=x㎝とすると、5:x=4:6より、x=15/2となります。2の(2)は今年も数学で最も難しい問題でしたが、例年よりできた人は多いのではないかと思います。△AFE=△ABE‐△FBEで求めます。尚、△AFE=△EDA‐△DFAでも求められます。△ABEの面積を求めるために、点AからBCに垂線を引き、交点をHとします。△AECが二等辺三角形であるので、CH=EH=3㎝となります。また、AC=5㎝だから△AHCで三平方の定理からAH=4㎝を求めます。よって、△ABE=8㎠が求められます。次に点Fを通りAHに平行な直線を引き、DAとBCの交点をそれぞれP、Qとすると、△ADF∽△BEFからPF:QF=AD:BE=10:4=5:2となり、QF=xcmとすると、PQ=AH=4㎝だから、(4-x):x=5:2より、x=8/7となります。よって、△FBE=16/7㎠となり、△AFE=8-16/7=40/7㎠が求められます。

 今年は大問1の3、大問2の1の関数応用の(1)、大問3の関数利用の右側の問題、大問4の最後の問題が解けていない場合で81点となりますが、大問4の最後の問題以外は、例年に比べれば解けない問題ではないので、数学な得意な方は90点以上とれたと思います。平均点は昨年より10点近く高くなると思います。

 

◎社会

 今年の社会はしっかりとした知識が必要な問題でしたが、社会をしっかり勉強していた人は簡単だったと思います。

 今年の世界地理は、大問1の1はメルカトル図法の特徴を問う問題でした。H26年の入試に同様な問題がでましたが、メルカトル図法では赤道に比べ北極や南極に近いほど大きく拡大されるのが特徴で、赤道から離れた場所ほど実際の距離は短くなるので、ア・ウ・イの順になります。3のオーストラリアの雨温図を選ぶ問題ですが、今年の社会で一番難しい問題だと思います。オーストラリアの中央部は砂漠で降水量が少ないことはわかると思いますので、bの都市がアの雨温図とわかったと思います。問題は残りの2つに地点の気候とその気候の特徴を理解していないと解けません。オーストラリアの西側のaの都市は地中海性気候で、冬場に降水量が多い特徴で、南半球なので7月に降水量が多いことになり、ウの雨温図が正解となります。オーストラリアの西側のaの都市は西岸海洋性気候で、夏場に降水量が多い特徴で、南半球なので1月、12月に降水量が多いことになり、イの雨温図が正解となります。オーストラリアの雨温図は教科書に載っていないので、南半球の気候区分と季節が北半球と逆になることと、気候の特徴を覚えていないと解けないので、ほとんどの方がカンで選んだと思います。4の(2)の資料から読み取れることを問う問題はアフリカ州が収穫面積が増えるにしたがって生産量が増加しているのに対し、アジア州ではそれほど収穫面積が増えていないのにも関わらず、生産量が増加しているので生産性が高くなっていること気づけば、できたと思います。世界地理は3のオーストラリアの雨温図の問題以外はできた人が多いと思います。今年の日本地理は知識さえあれば、難しくなかったと思います。大問2の2の(4)の資料問題も分かりやすかったと思います。今年の地理は地理の得意な方は30点以上とれたと思います。

 今年の歴史は昨年に比べれば易しかったと思います。大問3の2の(2)の鎌倉時代の出来事を古い順に並べる問題で、ウの御成敗式目とエの六波羅探題のどちらが先だったか分かればできたと思います。承久の乱の後に六波羅探題が京都に置かれ、その後、第3代執権の北条泰時が御成敗式目を定めたので、エ→ウ→ア→イの順になります。昨年も3世紀を西暦で表す問題が出題されましたが、3の(2)の近世の前の時代区分は中世で、昨年に比べればできた人は多かったと思います。4の選択問題ですが、井原西鶴は江戸時代前半の元禄文化のころに活躍した人物で、その頃の「酒田」について述べたものはイとなります。「酒田」を見落とした人はウを選んだかもしれませんが、だいたいの方はできたと思います。大問4の1は、江戸末期の通商条約締結前の出来事を2つ選ぶ問題ですが、オのペリー来航は分かったと思いますが、もう一つがアの蛮社の獄とイの生麦事件のどちらかで迷ったと迷ったと思います。どちらも教科書では太文字になっていないので、あまり覚えていなかったかもしれません。正解はアの蛮社の獄です。蛮社の獄は江戸幕府が異国船打払令を出したとき、それを批判した蘭学者の渡辺崋山や高野長英が処罰された事件ですので、開国前の出来事です。イの生麦事件は薩摩藩の大名行列の前を馬に乗ったイギリス商人が横切ったことが原因で、横切ったイギリス商人が殺された事件で、既に日本にイギリス商人がいるので、通商条約締結後の事件となります。アの方は正解した人は少ないと思います。昨年の同様の問題は2つとも正解を選んで完答する必要がありましたので、正答率は3割未満でしたが、今年は別々の採点ですので、点数的には高くなると思います。3の三国干渉ですが、普通はロシアがドイツとフランスとともに要求してきたことを問う問題ですが、フランスを含むという表現でロシアの記述がないので、若干戸惑ったかもしれません。ただ、指示語は「下関条約」と「清」を使うので、三国干渉を知っていれば書けたと思います。ただ、遼東半島の「遼」の字が書けなかったかもしれません。ひらがなで「りょうとう半島」やカタカナで「リアオトン半島」と書いても正解になるはずです。尚、「遼」の字は正確には二点しんにょうで書きますが、教科書はしんにょうで書いてありますので、二点しんにょうとしんにょうのどちらでも構いません。5は歴史の流れが分かっていれば、特に難しくはなかったと思います。今年の歴史は歴史ができる方は25点以上とれたと思います。

 公民も知識をしっかり覚えていれば、難しくはなかったと思います。大問5の5だけは書きずらかったと思います。大問6の3の国連難民高等弁務官事務所の略称は、ウとエで迷ったかもしれませんが、エがユニセスと読めるので、ウのユーエヌエイチシーアール(UNHCRをそのまま読みます)が正解です。尚、オのUSMCAは米国・メキシコ・カナダ協定で、NAFTA(北米自由貿易協定)に代わって2018年に締結さてた協定です。4の(1)は3Rのうち、リユースとリデュースで迷ったかもしれませんが、リデュースが正解です。尚、使えるものを何度も使用することがリユースです。今年の公民は25点以上とれていればよい方だと思います。

 今年の社会は社会の得意な方は80点以上とれた思います。平均点は昨年より5点以上高くなり、2年前のR4年の入試問題並みの平均点となると思います。

  

◎理科

 今年の理科も、過去20年で最も易しかったH31年の入試問題並みに易しい問題になっています。生物のヒトの消化の問題と物理の動滑車の計算問題と音の計算問題が難しかったぐらいで全体的に易しい問題でした。

 大問1は1の(2)でアサリがイカと同じ軟体動物だと知っていればできたと思います。この問題ができれば、完答できたと思います。大問2の1の「消化とはどのようなことか」は答えにくかったと思います。2の(2)は対照実験の問題で、だ液以外でデンプンの分解されないことを確認するため、だ液の入っていないものを選び、デンプンが分解されないのでヨウ素液は青紫色に変化し、ベネジクト液は変化しないので、エが正解になります。この問題は理解できなかった人が結構いたと思います。

 問3の2の等圧線の気圧を求める問題は、Xの隣の太線が1020hPaと分かれば、低気圧側なので、1間隔分の4hPa低い1016hPaと分かります。できた人は多いと思います。大問4の5の星座を1か月後で同じ位置で見るにはどうすればよいかという問題は、1か月で地球の公転で30°だけ西に移動するので、地球の自転で1時間で15°進むので2時間前に見ればよいことが分かり、正解のウが求められます。星の動きが分かっていれば簡単な問題でしたので、正解できた人は多かったと思います。

 大問5も基本的な問題でした。2の(2)の問題で、スチールウールでは石灰水が変化しないので、「二酸化炭素が発生しない」と答えられば、完答できたと思います。大問6のマグネシウムの酸化の問題ですが、これも基本的な問題で、3の計算問題できれば完答できました。3の(1)は得られる酸化マグネシウムの質量をxgとすると、2.1:x=3:5より、x=3.5(g)となります。3の(2)の未反応のマグネシウムの質量の求め方は、完全に酸化すると3.5gになるので、2.9gでは、まだ0.6gの酸素と酸化する未反応のマグネシウムが残っていると考えます。未反応のマグネシウムをxgとすると、x:0.6=3:2より、x=0.9(g)となり、エが正解となります。よく出題される未反応の質量の求め方を知っていれば解けたと思います。

 大問7の動滑車の問題ですが、1の上に引っ張る糸にかかる力の大きさを求める問題ですが、動滑車の原理である2本の糸に均等に力がかかることで、糸を引く力が半分になることを知っていれば、ウの正解が分かったと思います。3の(1)ばねばかりを引く速さの求める問題ですが、おもりを20㎝上げるので、糸は2倍の40㎝引くことに気づけば40÷5=8㎝/sを求めることができたと思います。そのまま20÷5=4㎝/sとした人もいたと思いますが、できた人の方が多いと思います。3の(2)の仕事率の求める問題ですが、ばねばかりの方で求めると2.5Nで40㎝=0.4m上げるのに5秒かかるので、2.5×0.4÷5=0.2(W)となります。おもりの方で求めると5.0Nで20㎝=0.2m上げるのに5秒かかるので、5.0×0.2÷5=0.2(W)となり、同じ仕事率が求められます。基本的な仕事率の問題なので、できた人が多いと思います。大問8の音の問題ですが、2の(1)の音の振動数の求め方は、波が元に戻るまで5マスかかっているので、1回あたり0.005秒かかることがわかります。あとは1÷0.005=200(Hz)と求められます。H31年の入試問題に同様な問題がありましたので、解いたことがある人はいたと思いますが、覚えていたかはというと難しいかもしれません。2の(2)の問題ですが、弦を細くしてはじいたときの実験結果に太い弦の振動数の2倍になったとあるので、図2の波の数の2倍になっているオが正解になります。【結果】のところを見落とさなければできたと思います。最後の3の問題は弦の性質を知っていれば書けたと思います。弦の張る強さを強くすると音が高くなり、振動数が増え、はじく強さを強くすると振幅が大きくなるので、「強く張り、強くはじいた。」と答えれば正解です。

 理科の得意な方は80点を超えることができたと思います。今年は70点越えの人もかなりいると思います。平均点は昨年より10点近く高くなると思います。

 

◎英語

 今年の英語は、過去5年で最も難しかったと思います。大問3の資料問題は説明文が若干読みにくく、大問4の長文自体の読みやすさは昨年並みですが、問題の問われ方が難しく解きにくい問題でした。大問5の英作文も書きにくい問題でしたので、全体的に時間が足りなかったと思います。

 大問2の1の(1)は熟語の… such as ~ (~のような…)を知っていれば書けましたが、できなかった人が多いと思います。(2)のmonthsはsをつけ忘れた人も多いと思います。(3)は「いとこ」と分かってもcousinのスペルが書けなかった人が多いと思います。大問2の2の対話文の(1)はエを選んだ人が結構いたと思います。大問2の3の並び替えの問題の(1)は(Please go) without me because I need to (stay at home all day.)となります。stayが動詞なので不定詞にするためにtoが前につき、withoutの位置を考えればできたと思います。(2)は助動詞+受け身の文だと気づけば、主語をa bridgeとした受け身の文と考えて、(I) hope a bridge will be built between (them.) となります。

 大問3の2は例年本文中に下線部があり、分かりやすかったのですが、今年は自分で探さなければなりませんでした。ただ、例年通り本文を訳すだけなので、本文が読めた人はできたと思います。3の内容に合うものを選ぶは、アは選べたと思いますが、エはグラフBの対象人数が本文から500名と読み取り、アンケートの結果から57.6%なので、250名以上が参加したがっているということに気づかないと答えられませんでした。

 大問4は4の(2)の疑問文に答えるためには、仮定法の「I wish he could stay at the studio longer...」(彼がより長く工房に滞在できたらいいのになあ。)の部分を応答文に書き直す必要があったので、難しかったと思います。今年は5の並び替え問題が例年より時間がかかったと思います。大問4の6のIはできたと思いますが、IIはprotectの動詞に続くので不定詞のtoを前につける形で考えなければならなかったので、できなかった人が多いかと思います。

 大問5の自由英作文の問題は「英語の動画を見る以外で、あなたの英語を学ぶ役立つ方法は何ですか。その理由は?」という課題でしたので、英語を学ぶ方法を書かなければなりませんでしたので、書くのに時間がかかったとと思います。

 今年の英語の平均点は昨年よりも5点以上低くなると思います。

 

  今年の入試は、英語以外は易しかったので、全体の平均点は15点~20点程度上昇すると思います。